馬の鈴

馬の鈴の音で目が覚めた。
この地方の馬は、みなこの鈴をつけている。鈴と言っても耳障りな高い音でなく「ゴワーン」と響くような落ち着いた響きだ。僕はこの音が好きだ。近くを流れる小川と鈴の音の間でいつまでも寝ていたいなと、起きるまでの余韻を30分程楽しんで体を起こした。時刻は6時30分手早くお湯を沸かし、レーのスーパーマーケットで買ったジンジャーティーをいれ、朝食の準備に取り掛かる。と言ってもインスタントラーメンの袋を開けるだけなのだが。テントの入り口から見える正面の山は頂から半分ほど朝日に照らされオレンジ色に輝いていた。もう10分もすればテントにも日が当たり朝露で濡れたテントもすぐに乾くだろう。マサラ味のインスタントラーメン、マギーの麺は本当にまずい。なんというか油っぽい。麺をさっと食べ終わりスープが残った。お楽しみはこれからだ。ここにパンとストリートバターを入れるのだ。ストリートバターとはただ僕がそう呼んでいるだけなのだけど、路上で野菜を広げて売っている婦人がレーにはたくさんいる。その中で、自家製のバターを売っている人がまれにいる。それがストリートバターだ。味は濃厚でうまい。まるでチーズを食べているような香りが口の中に広がるのだ。パンが十分にバター入りのスープを吸ったところで、ヤクのチーズを入れる。ちなみにこれもストリートヤクチーズ。ストーブのダイヤルをairに回す。一瞬炎が大きくなり、シューと音をたてて火を消した。一口目を口に運ぶ、マサラスープ、バター、チーズが口の中で溶けて最高に美味。実は昨日の夕食の時に発見した調理方だが、つぎの日の朝食も迷わず同じ料理であった。ぺろりとたいらげ、軽く食器を拭く。テントから荷物を出し、テントをたたむ。ギラギラと太陽が背中に当たるのを感じた。天気がいい事は山では何よりもうれしいことだ。そうこうしている内にホームステイからジムが降りてきた。準備万端の彼は待ちきれないと言った様子であたりをウロウロしていた。「OK!」パッキングが終わりジムに声をかける。今日も長い1日が始まる。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする